大学での奨学金を申し込む時は必ず保証制度を選択する必要があります。
どうして「保証人」が必要なのでしょうか?保証人は絶対に必要なのでしょうか。
これから奨学金を借りたいと思っている人は、おそらく学生が大半でしょう。学生であれば今までお金を借りることなどなあったでしょうから、保証人という言葉に危険な響きを感じても不思議はありません。
奨学金の保証人を中心に奨学金についての疑問を解消していきましょう。
参考リンク:奨学金の基本
日本学生支援機構の奨学金とは何なのか?
「日本学生支援機構」とは「JASSO」という名で、大学や短期大学・高等専門学校や専修学校、そして大学院などで学ぶ学生を対象にした、国が運営する奨学金となっています。この奨学金は貸与型となっており、これまで多くの学生が利用しています。
奨学金は、学生本人に貸与して、卒業後は学生本人が返していきます。返済された奨学金を次の世代の学生が借りるというシステムです。先輩から後輩へと奨学金のリレーをしているような仕組みです。
奨学金は基本的に在学している学校を通しての申し込みとなります。
国内の奨学金の種類は2種類!
日本学生支援機構の奨学金には2種類あります。国内奨学金と海外留学奨学金となっています。今回は主に国内の奨学金について取り上げます。
国内の奨学金には、利息なしの「第一種奨学金」と、利息ありの「第二種奨学金」、そしてこの第一種と第二種の奨学金と合わせて貸与できる「入学時特別増額貸与奨学金」があります。これは利息がつくものになり、入学時の一時金として利用できます。
第一種奨学金(無利息)ってどんなもの?
第一種奨学金は無利息です。対象は大学院や大学、短大、高等専門学校、専修学校に在学する生徒で、特に優秀な学生や生徒であり、経済的理由で就学が困難な人が選考対象となります。また、貸与月額については、所定の条件で決められています。
無利息で借りられるのは、特に優秀な学生ですので、一般的には少ない人数が対象となってきますね。利息がなければその分だけ返済総額が少なくなります。第一種は人気があるため、借り入れ申し込みはそれだけ狭き門になっています。
参考リンク:奨学金の基本
第二種奨学金(有利子)ってどんなもの?
第二種奨学金は、貸与金に利息がつきます。対象は第一種と同じ学生なのですが、選考基準は第一種よりも緩和されています。また、貸与月額については、本人が5種類の中から自由に決めることができます。そして在学採用の場合、その年度を4月までさかのぼって借りることができます。
学校への在学中については無利息ですが、卒業後は年利3%を上限とした利息がついてきます。平成26年度では、利息固定の場合は年0.89%、利息変動の場合は年0.30%となっています。
関連記事:奨学金は「借金」であるという真実
入学時特別増額貸与奨学金(有利息)ってどんなもの?
入学時特別増額貸与奨学金は、入学のときの一時金として利用するための奨学金です。第一種と第二種を合わせて利用することができますが、入学前に貸与するものではないので注意してください。その貸与金額については、10万円・20万円・30万円・40万円・50万円の5つの中から、選択をします。
この奨学金は、日本政策金融公庫の国の教育ローンが利用できなかった場合に、その世帯の学生や生徒が対象となります。
奨学金の保証制度とは
奨学金の保証制度については、奨学金を申し込むときに「機関保証に加入する」もしくは「連帯保証人と保証人を選任する」のどちらかを選択しなければなりません。この選択の意味がいまいちよくわからない、という方は思いのほか多いようです。この保証制度についてみていきましょう。
とりあえず奨学金には第一種と第二種があることはわかった。また、奨学金がお金を借りることはわかった。しかしこれでは奨学金の理解は不十分です。一歩踏み込んで、保証人についても知っておきましょう。大切なことです。
保証人は人じゃない?「保証機関」の利用
奨学金を借りるためには保証人が必要です。
奨学金は借金なので、借金には保証人が必要ってことですね。
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しかし、保証人は必ずしも人を立てる必要はありません。保証機関を利用することで、保証機関に保証人になってもらうことができるのです。
機関保証に加入する場合は、保証機関(日本国際教育支援協会)が連帯保証をすることになります。この場合、一定の保証料が発生します。その保証金については、毎月の奨学金から差し引いて支払う形となります。
連帯保証人や保証人については、保証機関が行います。不要です。
参照 http://www.jasso.go.jp/shogakukin/moshikomi/houhou/hosho_sentaku/kikan_hosho.html
機関保証を利用するメリットデメリット
人的保証が連帯保証人や保証人が必要なのに対して機関保証は、この連帯保証人や保証人が必要ありません。これが1つ目のメリットとなります。
返済が出来なくなったとき、人的保証では親や親戚に迷惑がかかりますが、機関保証で保証をしてくれているため、そういった心配がありませんね。これは2つ目のメリットでしょう。
デメリットとしては、保証機関を利用した場合は、保証料を支払わなくてはならなくなります。この保証料は実はそれほど安いものではありません。
例えば、奨学金月額50,000円に対して、月額保証料は2,246円、4年間を合計すると、107,808円もかかります。月額が80,000円に対しては、月額保証料は4,627円、4年間の合計は、223,536円にもなります。
もちろん借りる月額で違ってきますが、思った以上に高いと思いませんか?
人的保障とは?条件と年齢制限
連帯保証人と保証人を選任する場合は、人的保証となり、連帯保証人と保証人はそれぞれに選任をする必要があります。保証機関を利用することもできるけれど、保証人という「人」を立てることもできるのです。
連帯保証人については、父母もしくは、父母がいない場合については、父母の代わりになる人となります。また、保証人については、原則、4親等内の親族であり、連帯保証人とは生計を別にしている人となります。4親等内とは、兄弟や叔父叔母、伯父伯母、いとこが対象になってきます。また祖父母も可能ですが、年齢的に無理な場合もあります。年齢制限については、65歳未満となります。
人的保証を利用する場合のメリットデメリット
人的保証を利用する場合は、まず、保証金という手数料がかからないことがメリットです。
しかし、連帯保証人・保証人ともに、所得証明書や印鑑証明書が必要になります。また、保証人については65歳未満という年齢制限の条件があります。さらに、将来、お金をかりた学生が奨学金の返済ができなくなった場合に、連帯保証人や保証人がその返済を請け負うことになります。
つまり、返済責任については、奨学金とはいえ一般のローンと同じと考えてもいいということになります。
身近な人でも奨学金の連帯保証人になれない場合もある?
人的保証の場合には、連帯保証人と保証人が必要となりますが、親などであっても連帯保証人や保証人になれない場合もあります。詳しく確認していきましょう。
未成年であれば兄弟姉妹は不可?
成人を迎えている人であれば、兄弟姉妹でも連帯保証人になることが可能です。しかし、未成年の場合には、連帯保証人は親権者、親権者がいない場合には未成年後見人である必要があるため、兄弟姉妹が連帯保証人になることはできません。
未成年後見人になることができない人は、以下のようになっています。
・家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人、補助人
・破産者
・本人に対して訴訟をした人、及びその配偶者と直系血族
・行方の知れない者 ●法定後見監督人等の場合
上記欠格事由の他、後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹も欠格事由になります。
参照 http://www.courts.go.jp/kouchi/vcms_lf/kouken37P_senningo_miseinenhandbook_20150501.pdf
無職で収入が安定していない
連帯保証人や保証人は、奨学金を利用した人が返済できない場合に、代わりに返済の義務を負う人のことになります。つまり、連帯保証人や保証人は、安定した収入がある人でなければなりません。
無職の場合には、収入がないということになりますので、連帯保証人や保証人になることは難しくなりますね。ただし、資産家などで仕事をしていなくても収入が安定してある人については、連帯保証人や保証人になることは可能です。
年金生活者である
年金生活者ということは、65歳以上であるということになります。つまり、年齢制限にかかってしまうため、年金のみで生活している人については、連帯保証人や保証人になることは難しいでしょう。
債務整理などの事故情報がある場合は難しい
奨学金の連帯保証人や保証人は、奨学金を利用する人が返済できないときに代わって返済をしなければならないことになります。自己破産などの債務整理中である場合には、連帯保証人や保証人にはなることができません。
親などの保証人がいない場合はどうすればいいの?
上記のような事由により、親がいたとしても連帯保証人や保証人になる人がいない場合には、機関保証制度を利用するようにしましょう。
返済金額が高くなりますが、人的保証を利用できないのであれば、機関に保証人になってもらうことで奨学金を借りることができます。
連帯保証人や保証人は、奨学金を利用する人が返済できない場合に、代わって返済をしなければならない義務を負います。このようなリスクを背負うため、連帯保証人や保証人になることを断られることもあります。実際、保証人を人のお願いし難いという人もいて、奨学金だけでなく住宅ローンなどでも広く機関保証が行われています。
人的保証と機関保証のどちらがいいのか?
では人を保証人として立てる方法と保証機関にお願いする方法、どちらを選ぶのがいいのでしょうか?
「保証人をお願いできる人がいない」という人も多くなってきています。さらに、保証人になってもらう人は、65歳未満という条件もあるため、難しいという現実もあります。そのため、機関保証を選ぶ人も増えています。どちらがいいのかという点では、保護者の経済状況・親戚との人間関係などがポイントとなってきます。
保護者の経済状況がよいのであれば、もし支払えなくなったとしても、返す力がありますので、保証料のかからない「人的保証」を選ぶのが良いでしょう。
しかし、保護者が経済的に厳しいということである場合、親戚に迷惑をかけることになってきます。
この場合は、親戚との関係性が大きく関わってくるでしょう。もし迷惑をかけたくないということであれば、「人的保証」を選択することはやめて、機関保証を選択することをおすすめします。
もし、奨学金をかりた学生本人が破産という状況になった場合でも、保証機関での保証となるので、親や親戚には迷惑をかけることもありません。それぞれの家庭の事情などを考えて「人的保障」を選ぶのか「機関保証」を選ぶのかを選択すると良いと思います。
機関保証制度の申込み手続きと必要書類は?
奨学金の申込みと機関保証制度の申込み手続きは、学校が窓口です。保証依頼も奨学金申し込みと同時となります。
また、未成年者については、親権者もしくは後継人の自署と押印、また本人以外の連絡先も必要です。これは本人と連絡が取れないときの照会先となります。
奨学生制度に採用された場合は、保証依頼書と返還誓約書を提出します。これも学校の窓口となります。奨学金関係の手続きは基本的に学校が窓口になっていると考えるとわかりやすいですね。
人的保証制度の申し込み手続きと必要書類は?
人的保証での奨学金の申込みについても学校が窓口になります。奨学生制度に採用された場合は、返還誓約書を提出します。このとき、連帯保証人と保証人も記入します。
また、連帯保証人の必要な書類は「印鑑証明書」と「収入に関する証明書」、保証人については「印鑑証明書」となります。
人的保証での奨学金申し込みの際には、連帯保証人及び保証人に記入をお願いし、押印もしてもらいます。押印の際には、印鑑証明書と同じ印鑑である必要がありますので注意しましょう。
連帯保証人や保証人の変更はできる?
連帯保証人や保証人に何かあった場合には、連帯保証人や保証人が不在ということになってしまいますね。このような場合には、連帯保証人や保証人の変更をする必要が出てきます。
連帯保証人が死亡した場合
親などの連帯保証人が死亡してしまった場合には、連帯保証人が不在となってしまいますので、新たに連帯保証人をたてる必要が出てきます。
連帯保証人の変更手続きを行いましょう。連帯保証人の変更手続きには、「連帯保証人変更届」を郵送で提出します。
もちろん連帯保証人には条件があります。その条件を満たす人を選出する必要があります。連帯保証人になれる人については、原則として、父母・兄弟姉妹または伯父(叔父)・伯母(叔母)などにお願いをします。
もし、連帯保証人が見つからない場合には、機関保証への変更をすると奨学金を継続することができます。
保証人の変更について
保証人についても、連帯保証人と同様に変更の手続きをすることができます。そして保証人になれる人の条件を満たしている必要があります。保証人になれる人については、父母以外であり、本人や連帯保証人とは別生計であること、また、4親等内の親族であり65歳未満であることが必要です。
もし保証人が見つからない場合には、機関保証への変更をすることで、奨学金を継続することが可能です。
変更理由は書面が必要?
変更理由については、基本的に問われることはないでしょう。奨学金の種類によっては、変更理由を書面で準備する必要がありますが、日本学生支援機構の奨学金制度では変更理由を書面で用意する必要はありません。
必要な書類については、次の通りになります。
- 連帯保証人(保証人)変更届
- 印鑑登録証明書(コピー不可)(連帯保証人・保証人の変更ともに必要)
- 源泉徴収票や所得証明書(コピー不可)などの収入証明(連帯保証人の場合に必要)
人的保証から機関保証へ変更したい時は?
連帯保証人や保証人が死亡したなどの理由により、人的保証が難しくなることもあります。そんな時には、人的保証から機関保証への変更をすることができます。しかし、奨学金を返済中に機関保証へ変更するためには条件があります。
奨学金を返済中に人的保証から機関保証へ変更する場合には、延滞していないことが条件となっています。
延滞している場合には、機関保証をしてもらうことはできません。
また、振替口座での返済を行っていることも必要になります。さらに、返済している本人が自己破産などの債務整理中である場合には、機関保証を受けることができません。
返還相談センターへ連絡をすると、「保証の変更依頼書」が郵送で送られてきます。
必要事項を記入し、必要な書類を準備して日本学生試験機構へ提出を行います。書類などの審査が行われ、それに通ることができれば、保証機関から保証料の請求書が届きますので、支払いを済ませます。
ちなみに保証機関は「公益財団法人日本国際教育支援協会」となります。
保証人や連帯保証人に変更があったら?
奨学金を利用している本人、もしくは連帯保証人や保証人の住所や電話番号、また勤務先や、結婚などによる氏名の変更がある場合には、変更手続きが必要となります。手続きの方法について確認しましょう。
手続きは、インターネット(スカラネット・パーソナル)・郵送やFAX・電話などで行えます。
インターネット(スカラネット・パーソナル)での手続き
スカラネット・パーソナルとは、貸与中や返還中の人が利用登録をすることでさまざまなサービスが利用できるものです。郵送などのように時間がかからず、その場で変更が可能なので、上手に利用しましょう。利用方法は、ログインをして変更手続きを行います。
参照 http://www.jasso.go.jp/shogakukin/oyakudachi/sukara_ps/index.html
郵送やFAXでの手続き
郵送もしくはFAXでの手続きが可能です。変更届を取り寄せるか、下記のリンクから印刷し、必要事項を記入し、郵送もしくはFAXで送ります。ただし、結婚などによる改名の場合には、公的証明(新旧氏名が分かるもの)を添付する必要があります。改名については、スカラネット・パーソナルからは変更ができません。
電話での手続き
奨学金返還相談センターへ電話をして変更手続きを行うことも可能です。
参照 http://www.jasso.go.jp/sp/toiawase/index.html
住所変更する際の注意点
住所変更する際には、旧住所への郵便物が届くように、郵便局での転送サービスなどを利用することも忘れないようにしましょう。住所不明となった場合には、連帯保証人や保証人に確認の電話が入ることや、自治体などへ照会が行くこともありますので注意してください。
まとめ
日本学生支援機構での奨学金制度は、国での運営となっていますので、他の奨学金との併用も可能となっています。
そして、この奨学金制度は、当然のことながら卒業後は確実に返済をすることが大切です。なにより、返済をしたお金で、今の学生の奨学金を貸与できるようになっているからです。
足らないお金を奨学金で借りて、学ぶために使えるということはとても良い制度だと思います。しかし、基本的にはこれは一般のローンと同じものだと考えるようにしましょう。そして、遊ぶために安易に奨学金制度を利用してはいけません。
卒業後の返済は、結婚しても続くことがあります。これによって生活が圧迫するということもありえます。本当に必要な人が、この奨学金制度を利用することを考えましょう。
また保証人については、その保障制度によって違いますが、人的制度を利用する場合は、返済が滞った場合に、親や親戚に迷惑をかけます。自身が返すのだという意識が必要になります。
学生を終え、社会人になるころには、既に成人となっているでしょう。大人としての意識をしっかり持ってこの奨学金制度を上手に利用していきましょう。
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